中国の総就職人口は6.7億人であり、このうち都市部での合計は2.7億にのぼっている。現在、中国では、就職難が大きな問題となっている。この就職難は、主に、@労働力の需要の問題(求人率の低さ、絶対的な就職口の数の限界の問題)、A労働力の構造的な問題(新興産業における人手不足と伝統的産業における人員過剰の問題)、B労働力市場に関する規則の欠如の問題(この欠如により、就職仲介・斡旋組織の不法行為の問題、労働者の権利侵害の問題が生じている)、C職業教育などの問題(職業訓練の不足や時代遅れといった問題)、D経済体制の転換による整理解雇者の問題(計画経済から市場経済への転換、国有企業から私有企業への転換等に伴い多くの整理解雇がなされ多くの失業者が生じている)、E教育改革による新卒者の就職難の問題(教育改革により大卒者が増加したにも関わらず、これに見合うだけの就職口が確保されていないため、大卒者の就職難も深刻である)等の原因によるものである。
このような就職難の問題につき、整理解雇者の再就職の問題は特に重要視されており、この解決手段として、共産党中央部また国務院は度重なる指示を出してきた。しかし、これでは足りず、就職の促進、就職における国家の役割の確認、就職促進の制度化の問題などを解決するためには、就職を促進する法律の制定が必要不可欠と認識されてきた。このような認識に基づいて、労働・社会保障部は「就職促進法草案(送審稿)」を制定して2007年1月国務院に提出した。国務院はこれを審議して「中華人民共和国就職促進法(草案)」(「草案」)を作成し、2007年3月全人代常務委員会に提出した。また、これと同時に「草案」を公開し、パブリックコメントを求めた。現在、「草案」は全人代常務委員会により審議中である。
以上が新企業所得税法の主な内容であるが、わずか60条ではやはり限界がある。たとえば、利益の少ない小型企業についての判断基準、控除の具体的方法、暫定措置の実施期間中その対象企業の複雑な状況(特に優遇を利用した偽の外資企業)に応じて具体的には如何に調整を行うかなどにつき、まだ不明瞭な点が多く残されている。これらは、近い将来中国国務院の制定する実施条例によって解決されることになるだろう。
「草案」の制定における基本的な考え方は、@国の就職促進の方針・政策を反映させ、かつ、これを制度化させること、A就職促進をめぐる各種問題を解決すること、B国の中央部と各地方政府の就職促進における責任分担を明確にすること、C他の関係する法律(例えば、労働法、労働契約法草案、女性権益保障法など)との調和を採ること、である。
公開された草案に対しては、以下のような意見が表明されている。
近年中国では、労働・就職問題が度々大きな社会問題としてとり上げられ、注目されている。これを解決するため、現在、立法機関は、この「草案」のほかにも、「労働契約法草案」についても検討している。他の法律との調和に対する配慮のせいか、一般的な法律と比べ、この「草案」には、政策的な規定が多く、執行性に欠けることは否定しがたい。例えば、政府の不作為に対する法律責任は設けられておらず、草案全59条はもっぱら政府の作為に対する法的責任を定めているにとどまる。このことから、草案の実用性には疑問も呈されている。
しかし、いずれにしても、近時中国では労働者の権利意識が急速に高まっている。これまでは、企業側としては、組合法、労働法などの労働関係法をあまり重視しないで経営を行うことも可能だったともいえる。しかし、労働者の権利意識の高揚とにあわせて、今後これらの法律もより整備されていくのは必然である。そうなると、これらの法律を重視して来なかった企業も、今後はこれを重視せざるをえないことになるであろう。また、労働関係法規を重視してきた企業であっても、今後の法整備に合わせた労働戦略の修正は必須と思われる。解雇時の条件の厳格化、雇用平等などを意識した採用基準の採用など労働条件全般の見直しが、中国に進出した外国企業の急務になりそうである。