トピックス|山崎法律事務所上海支所(日本山崎律師事務所駐上海代表処)

最高人民法院の選出した2006年度知財関連10大民事訴訟事件(2)(2008/05/20)

2007年4月25日、中国最高人民法院は、4月26日の「世界知的所有権の日」の宣伝活動にあわせ、2006年度の中国知財関連10大民事訴訟事件を選出して発表した。ここから、2006年度の知財侵害事件を概観することができる。

4.ルイ・ヴィトン社(原告X) v.上海聯家スーパーマーケット(被告Y、合資会社) - 商標権侵害訴訟事件

フランスのXは、LVなど五件の商標(本件商標権または本件商標)を中国で商標登録した。2006年前半頃、上海市にあるYの一つの店舗は、50人民元未満の安値で本件商標と類似する標識(本件標識)を付した三種類のハンドバック(本件商品)を販売していた。これを知ったXは、証拠を得るために、公証人の立会いのもとで本件商品を購入した。

Xは、Yの行為が本件商標権を侵害し、Xの営業上の信用を毀損するとして、上海第二中級人民法院に提訴し、@侵害行為の停止、A50万人民元の損害賠償(11.8万の調査費用などを含む)を請求した。

これに対し、Yは、本件商標権及び本件商品の販売行為は認めるが、@本件商品は深圳市のある会社から合法的に購入したものである、A本件商標に対して無知なYの従業員が本件標識と本件商標の類似を認識せずに本件商品を販売したので、Yに過失がない、B損害賠償額の算定に問題がある、と抗弁した。

一審人民法院は、@本件商品の一種類に付した本件標識が本件商標と同一で、他の二種類の商標も本件商標と類似しており、本件商品を本件商標と関係ありと消費者に誤認させるおそれがある、A本件商標は著名商標である、B大手スーパーであるYの株主の一人はフランスの会社であって、本件商標の著名性を知らないわけがない、CYが侵害しないように合理的注意義務を果たしたことを立証することができないので、過失がある、DXの製品との質に大差のある本件商品の販売により、Xの営業上の信用を著しく害したとして、請求@を認め、状況を総合的に判断したうえで請求Aの賠償額を30万人民元とした。

一審判決に対し、両当事者はいずれも上訴しなかったので、本件は確定した。

5.ニッポンペイント(中国)有限会社(原審原告X)v.中山市可邦ペイント有限会社(原審被告Y1)、陳長明(原審被告Y2)- 商標権侵害訴訟事件

Xは、1992年12月に設立し、ニッポンペイントの中国子会社であって、2003年8月親会社から「立邦」(「ニッポン」の中国語発音は「立邦」である)の文字商標権(本件商標権)を譲り受けた。Y1は、2000年9月広東省中山市に成立した会社であり、2004年4月にY1の株主の何人かが香港に日本立邦ペイント国際グループ(香港)有限会社(以下、Z)を設立した。2004年5月、Y1は、Zと協議書を結び、@Y1はZのペイント製品にY1の登録商標「来士威KEBAN」の使用を許可し、AZはY1をZの製品の製造者として認め、Y1のペイント製品(本件商品)にZのブランドを貼り付けて販売する権利を与えた。また、2005年1月、Y2は、Y1とZから、本件商品の販売権を得た。

本件商品の販売が自分の商標権侵害になると主張したXが、人民法院に本件商品の証拠保全を請求した。そして、証拠保全として人民法院に差押えられた本件商品の包装印刷に、Zの商号「日本立邦ペイント国際グループ(香港)有限会社」との標識があるが、実際の製造者Y1の商号、住所などに関する情報は記載されていない。

一審人民法院は、Y1とY2のこれらの行為が本件商標権侵害行為に当たると判断し、本件商品の生産、販売及びそれと関連する宣伝活動の即時停止、新聞への謝罪文の掲載、訴訟費用と証拠保全費用の支払いなどを命じた。これを不服とするY1は上訴した。

二審人民法院は、以下のように判断した。即ち、Xは、立邦ペイントを長年間に製造、販売し、その宣伝活動を行ったことにより、製造業界と消費者中に高い知名度を得た。「立邦」というブランドは、Xに巨大な経済利益をもたらすものである。それにもかかわらず、Y1とY2は、「日本立邦ペイント国際グループ(香港)有限会社」という文字を目立つように本件商品に使用することにより、消費者に、Y1がXあるいはXの関連会社であり、本件商品がXの商品、あるいはXの許可のもとに製造されたものであることを誤認させて、Xの市場利益を害した。また、Y1とY2の当該行為は悪意によるものである。

以上の判断に基づいて、二審人民法院は、Y1の上訴を退け、原審判決を維持した。

  • 補足@: 本件は、インターネット上に詳しい情報が掲載されていないので、たとえば、Xの賠償金請求額、Y1及びY2の反論などの詳細はわかりません。
  • 補足A: 香港では、会社の設立が相対的に簡単なので、本件のように、Y1の株主は、Xとなんらの関係もないのに、「日本立邦ペイント国際グループ(香港)有限会社」という名称の会社を設立することができ、そして、当該会社名の使用をY1へ譲渡したのです。

6.CHANEL株式会社(原審原告X) v.北京秀水豪森服装市場有限会社(原審被告Y1)、黄善旺(原審被告Y2)- 商標権侵害訴訟事件

X(その商号の中国語は「香奈児」である)は、著名商標「CHANEL」(本件商標)の所有権者である。2005年4月、Xは、北京秀水街市場(有名ブラント品の卸し、小売業者の集中地)のY2の店舗から本件商標を付する財布(本件商品)を発見し、購入した。5月、Xは、北京秀水街市場を経営・管理するY1に弁護士による警告書を発し、その管理する市場内に本件商標を侵害する本件商品が販売されていることを知らせ、侵害行為を制止するように要求した。6月、Xは、Y2の店舗から再び本件商品を発見し、購入した。9月、Xは、Y1とY2を相手取り、本件商標を侵害したことを理由に訴訟を提起した。10月、Xは、Y1の管理する他の店舗からも本件商標を侵害する商品を発見し、購入した。また、三回にわたる本件商標を侵害する商品の発見、購入過程において、証拠として、公証人による公正証書を得た。

一審人民法院は、@本件商品を販売したY2の行為は本件商標を侵害するものであり、Y2に侵害行為の即時停止、損害賠償責任がある、AY1は北京秀水街市場の経営・管理者として、市場内に発生する侵害行為について監督、制止の責任があるにもかかわらず、その責任を尽くさず、Y2の侵害行為を助長したので、Y2の侵害に為に連帯に責任を負わければならない、と判断して、Y1とY2に侵害行為の即時停止と損害賠償金1万元の支払いを命じた。

これを不服とするY1は上訴した。二審人民法院は、Y1はその管理範囲内の知財権侵害行為について遅延なく制止する義務を負うべきにもかかわらず、Xからの弁護士による警告書を受けたのちにも、義務の履行を怠ったため、Y2の侵害行為を助長した。そのため、Y1に過失があると判断して、一審の判決は、事実の認定及び法律の適用に問題がないと判断し、一審判決を維持し、Y1の上訴を退けた。

  • 補足: 本件の発生地「北京秀水街市場」は、偽ブランド品の卸し、小売の中心地であることは中国において有名です。ただし、「市場」の管理者が度重なる知財権侵害訴訟事件の被告になったことで、シルク製品の卸しに経営変更しました。

7.アメリカニューバランス社(原告X) v. 晋江市求質東亜社(被告Y1)、陳家財(Y2)- 商標権侵害及び不正競争訴訟事件

Xは、1983年から中国に商標「N」(本件商標、中国語では「紐巴倫」と呼ぶ)を登録し、その商標権者である。Xは、2004年以来中国で「紐巴倫」文字を付し、Xの運動シューズによく似た商品(本件商品)が大量に販売されたのを発見した。真相を究明したところ、本件商品は、香港「紐巴倫」社(Z)の授権のもと、Y1により生産、Y2により販売されたことがわかった。また、Y1とZが「紐巴倫」文字を使用して、Xの宣伝スタイルをまねたパンフレットを大量に作って配布したこともわかった。

Xは、前記行為が商標権侵害、不正競争に当たるとし、Y1 とY2を相手取り、杭州市中級人民法院に訴訟を提起した。その請求内容は、@本件商標を著名商標と認定する(中国中級人民法院には、著名商標の認定権限がある)、A侵害行為を停止する、B50万人民元を賠償する、というものである。

杭州市中級人民法院は、Y1の行為について、@本件商標と本件商品に使用する標識とを対比すると、それぞれの構成要素が違っており、消費者に視覚上の錯誤を生じさせないが、著名企業Xが本件商標の文字「N」を目立つように使用、宣伝することにより、消費者に本件商標とXの特有の製品とを結び付かせたので、本件商標はXの製品識別の特徴を構成する、AXの同業者Y1が「紐巴倫」の文字を本件商品、パンフレット等に目立つように使用し、製造者でないZを共同製造者のように偽って本件商品に表示し、アメリカ製でないのにアメリカ製のように偽装する行為は、故意に製品の出所を混同させ、B前記行為は消費者に誤認混同を生じさせ、C前記行為がXの商品の著名性を悪用し、信義則に違反し、市場秩序を混乱させた、D前記行為はXの経済利益を害した、と判断した。また、杭州市中級人民法院は、Y2の提出した証拠から、Y2は本件商品の合法的な供給源を立証することができるので、不法行為責任を負うべきでない、と判断した。

以上の判断のもとで、杭州市中級人民法院は、@Y1の本件商品の製造、販売等の停止、AY2の本件商品販売の停止、BY1のXに対する30万人民元の損害賠償、を命じた。

8.朱志強(原審原告X) v. Nike(アメリカ)社(原審被告Y1)、Nike(蘇州)社(原審被告Y2)、北京元太社(原審被告Y3)、北京新浪技術社(原審被告Y4)- 著作権侵害訴訟事件

Xは、インターネット漫画「孤独求敗」等の製作者で、そのアニメ人物が「マッチ小僧」(本件小僧)と呼ぶ。2003年10月、Y1とY2は、自分及びY4のホームページ、北京テレビ局等に、アニメ人物「黒棒小僧」(侵害小僧)を使って新製品を宣伝した。また、Y3はこれらの宣伝活動の経営者である。本件小僧と侵害小僧はいずれもその頭を円形とし、その胴体と四肢を線で表示している。

侵害小僧が自己の著作権を侵害したとして、Xは、Y1〜Y4を相手取り、北京第一中級人民法院(原審法院)に訴訟を提起した。その請求内容は、@200万人民元の連帯賠償、A著作権侵害行為の停止及び謝罪広告の掲載、B侵害行為の阻止に支払った合理的な費用の連帯賠償の請求、である。

これに対し、Y1らは、上海地下鉄の交通標識等を引用して、「公共領域に、本件小僧と似るアニメ人物がすでにある」ので、著作権侵害にならないと抗弁した。

原審法院は以下のように判断した。つまり、@公共領域のアニメ人物と比べると、本件小僧は独特の表現方式を有し、別個の再創造ということができ、著作権法上の美術作品に当る、A侵害小僧の基本特徴及び立体効果が本件小僧と似ているので、二つの小僧は類似する、B侵害小僧が本件小僧を模倣したものである、CXによる授権なしの侵害小僧の使用はXの権利を侵害した、DY1とY2の使用行為はXの署名権、改編権を侵害した、EY3とY4は合理的な審査義務を果たしたので、本件小僧の著作権を侵害したといえない、というものである。

以上の判断に基づき、原審法院は、@Y1とY2の侵害行為の即時停止、AY3とY4の宣伝行為の即時停止、BY1とY2の謝罪広告、CY1とY2の30万人民元の連帯賠償を命じ、DXのその他の請求の棄却する判決を下した。

これを不服とするY1とY2は、北京高級人民法院(二審法院)に上訴した。上訴理由は、@本件小僧の著作権性、A本件小僧と侵害小僧の類似性、及びBY1とY2の不法行為性について、一審人民法院がこれらを肯定する認定の判断を誤った、というものである。

これに対し、二審法院は、以下のように判断した。即ち、@「円形を人物の頭とし、直線を体の他の部分とする」方法をもって人物を創造することは「公有領域」に属し、誰でも創造することができる、A本件小僧の独創性は高くなく、これに厚い保護を与えることはできないが、同時に「公有領域」に属する部分は保護範囲外とすべきである、B本件小僧と侵害小僧との間に同じ部分があるが、これは「公有領域」に属しており、差のある部分が各自に創造性あり、従って侵害小僧が本件小僧を侵害したとはいえない、というものである。

よって、二審法院は、原審判決を取り消し、Xの訴訟請求を棄却する、との判決を言い渡した。

9.崔健(原告X) v. 中国レコード会社深圳分社(被告Y1)、華韵影視社(被告Y2)、上海客都チェーン店中衛支店(被告Y3)- 著作権、実演権侵害訴訟事件

Y1は、その親会社である中国レコード会社の許可のもとに、中国音楽著作権協会(中国の音楽著作権を管理する社団法人で、以下Zとする)に0.28万人民元の著作権使用料を支払って、「崔健-1985回想」(本件権利)という音楽製品のCD複製権を買い、Y2に複製を依頼して、複製品(本件商品)を発行した。Y3が本件商品の販売者である。本件商品の全12曲のいずれの実演者もXで、一曲の作曲者がXで、もう一曲の作詞者・作曲者がともにXである。

Xは、自分の許可なしに、Y1〜Y3の出版、複製、発行行為が自分の著作権、実演権を侵害し、損害を受けたとの理由で、寧夏省中衛市中級人民法院に訴訟を提起した。その請求内容は、@Y3の販売行為の即時停止、AY1とY2によるXの著作権、実演権侵害の即時停止、本件商品の回収、Xの許可を得ない本件権利の使用禁止、BY1とY2による新聞紙上への謝罪広告の掲載、CY1とY2による39.3万人民元の賠償、である。

これに対し、Y1は、Zが1985年本件権利を使用し、レコードを製作したとき、すでにXに報酬を支払ったが、今回の使用行為は前回行為の延長であって、Xの著作権、実演権を侵害していない、と抗弁した。

中衛市中級人民法院は、以下のように判断した。即ち、@「著作権法」は、著作権者、実演者には、その創造した作品を他人に複製、使用させて、報酬を受ける権利を有すると規定している。AY1とY2は、Xの許可なしに行った本件商品の発行、販売行為がXの権利を侵害するので、民事責任を負うべきである。BZが本件権利の権利者であるが、Zから許可を受けたとしても、実演者の許可を受けたわけではない。CZに支払った著作権使用料は単なる歌詞、曲の製作者への報酬であり、実演者への報酬ではない。D損害賠償額につき、Xはそれを立証することができないので、侵害実態に応じて総合的に判断すべきである。E著作権使用料について、Y1はすでにこれを中国音楽著作権協会に支払ったので、当該使用料の請求をXが中国音楽著作権協会に請求すべきである。E謝罪広告に関して、侵害行為がXの人格権を害したわけではないので、人民法院はその請求を支持すべきでない。

以上の判断に基づき、中衛市中級人民法院は、@Y1とY2が共同して、Xにその経済的損失について1.92万人民元を賠償せよ、A本件権利の侵害を阻止するために支出した費用2.83万人民元を賠償せよ、Bその他の請求を棄却する、という判決を言い渡した。

10.山西省北方種業社(原審原告X) v. 北京奥瑞金種業社(原審被告Y2)- 植物新品種の紛争訴訟事件

北京奥瑞金種子社は、2003年3月、「隣奥一号」という種苗(本件種苗)を権利登録した。その後、Xは、北京奥瑞金種子社から本件種苗に関する権利を譲り受けた。

2005年3月、Y2は農業科学研究所(原審Y1)との間に、「玉蜀黍の種の生産契約」(本件契約)を締結した。本件契約の内容は、@Y1がY2のために、「中北恒六」という玉蜀黍(侵害種苗)の種120万キログラムを栽培する、Aそのために、Y2は侵害種苗の種をY1に提供する、B侵害種苗から生じた法律責任はY2がこれを負う、ということである。その後、Y2はY1に侵害種苗を提供し、本件契約の履行中、Y2は、従業員を派遣してY1の作業を監督・検査した。

2005年9月、Xは、侵害種苗が本件種苗に関する権利を侵害したとして、Y1を相手取り、甘粛省蘭州市中級人民法院(一審人民法院)に訴訟を提起し、侵害行為の差し止めと損害賠償を請求した。

一審人民法院は、審理中にY2を共同被告として訴訟に追加した。また、一審人民法院は侵害種苗の証拠保全をし、北京農林科学院玉蜀黍研究センターに鑑定を依頼した。鑑定の結果は、本件種苗の見本と侵害種苗の見本の間に「差異がなく、同一種苗である」というものである。

一審人民法院は、鑑定結論を根拠に、侵害種苗が本件種苗に関する権利を侵害するものと判断し、@Y1とY2は侵害行為を直ちに停止せよ、AY2はXに86.4万人民元を賠償せよ、BY1はXに賠償責任を負わない、C訴訟受理費、鑑定費合わせて1.7万人民元余はY2が負担する、という判決を言い渡した。

一審判決に不服のY2は、甘粛省高級人民法院(二審人民法院)に上訴した。二審人民法院は、@Xは本件種苗権の譲受人であって、本件種苗に関する権利を有し、法により保護を受けるべき、A権利者Xの許可なしに、侵害種苗を商業上に使用する行為は不法行為に当たる、B本件契約における侵害種苗の提供者Y2が侵害種苗の権利状況を知りうべきであったので、損害賠償責任を負わなければならない、と判断し、上訴を退け、原審判決を維持するとの判決を言い渡した。

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