トピックス|山崎法律事務所上海支所(日本山崎律師事務所駐上海代表処)

中国経済週刊の選出した2007年度知財関連10大民事訴訟事件(1)(2008/07/31)

1. 北大方正電子有限会社(原告X) v. Blizzard Entertainment社ら3社(被告Y1、Y2とY3)- 著作権侵害訴訟事件

Xは、中国における最大の中国語データベース製品の提供者である。Y1(Blizzard Entertainment社)はアメリカにおけるオンライン・ゲームの開発・運営をする会社であって、2003年オンライン・ゲーム「World of warcraft」を開発した。2005年6月より、Y2(The 9 limited社)は中国の大陸において「World of warcraft」の代理権を取得し、二年余りの間にかなりの経済的利益を得た。

2007年4月、Xのスタッフが「World of warcraft」中にXの研究開発した字体が使用されていることを発見したため、Xは民事訴訟の提起を決意し、訴訟前の証拠保全の手続きを済ませた。2007年8月14日、北京高級人民法院に対して、Xは、その研究開発・編集した文字データベース中の「方正北魏楷体」、「方正剪紙」、「方正細黒」などの五つの字体に関する著作権への侵害を理由として、Y1、Y2とY2のディーラーY3(情文図文社)を訴えた。Xは、「World of warcraft」の中国大陸のユーザー数は統計的見積もりによれば750万人存在し、上記侵害行為は非常に重大なもので、それによりXに十億人民元以上の損失をもたらしたと主張して、訴訟を提起した時点での損害賠償額として1億人民元をY1らに請求した。

Xの訴訟に対して、中国国内において問題点が指摘された。要約すれば以下の三点が重要である。すなわち、@訴訟の対象について、Y2は上記オンライン・ゲームの中国国内の中国語化と運営を担当する会社であるが、Y1はただその英語版の開発者であって、この二社を同時に訴えたのは合理性がない、A訴訟のタイミングについて、上記ゲームが2005年の段階ですでに中国国内において使用されており、その当時Xからの訴えがなされていないにもかかわらず、巨大な経済的利益が生じた段階になって訴訟を提起することは、その訴訟行為の動機について疑問がある、Bユーザーは上記ゲームの内容が好きであるから上記ゲームを選択したのであって、方正データベースの字体によるものではないのであるから、Xの主張した十億元の損害額と賠償額を如何なる根拠で算出したのか、理解しにくい、という点である。

北京高級法院は本提訴を受理したが、審理をまだ行なっていない。本件は、WTO加盟以来、知財権侵害をめぐって中国会社が外国会社に最も高額な損害賠償金額を請求した訴訟事件として中国において非常に注目されており、2007年度知財関連10大民事訴訟事件の一番目に選出された。

2. 藍野酒業有限会社(原告X) v. ペプシコーラ(上海)有限会社(被告Y)- 商標権侵害訴訟事件

Xは、浙江省の辺鄙地区にある小規模の民営企業で、2003年「藍色風暴」という商標を登録した。その登録範囲は、コーラ、ミネラル・ウォーターその他の飲料に及んだ。登録後、Xはそれを自ら生産したビールに用いた。2005年5月より、ペプシコーラ社は数億人民元を投入して中国大陸において「藍色風暴」というテーマで熱心に販促運動を推進してきた。その宣伝ポスターは、数名の有名な俳優の写真と「藍色風暴」の文字から構成されるものである。

2005年12月12日、Xは浙江省杭州市中級人民法院に商標権侵害を理由に、ペプシコーラ社の現地法人であるY社を訴えた。Xの訴えの理由として「藍色風暴」登録商標の所有者はXであるにもかかわらず、Yによる同一名称を用いた熱心な宣伝活動のために、Xがペプシコーラ社のブランドを盗用していると誤解されることが多く、この誤解によって、製品が地元の質量技術監督局によって没収されたり、締結間近の商談が失敗したりすることがあり、また、会社が同商標を使用して炭酸飲料とお茶製品を開発するという当初の経営計画の実施もできなくなるので、これらの問題を解決するため、Yとの交渉を求めたが拒否されたため、会社の名誉を維持するため、やむを得ずに訴えたと述べた。

2006年11月、杭州中級法院の一審判決は、@Yの使用した「藍色風暴」が商標ではなく、ポスターであることと、AYに商標権侵害の意図がないことを理由に、Xの敗訴を言い渡した。これに対して、Xは浙江省高級法院に上訴した。高級法院の二審判決は、@形式上、Yの標識がXの登録商標に誤認される可能性があることと、A実質上、消費者が二つのものを混同したことがあること(Yが行なった77例の市場調査の中に、Yの標識がついた製品がXの登録商標の製品だと誤認したものは10例、誤認の可能性があると考えるものは5例、また二つは近似だと考えるものは21例に及ぶ)を認定して、一審の判決を覆し、Xのすべての訴求を認めた。つまり、Yに新聞紙の謝罪文掲載と300万人民元損害賠償金の支払いを命じた。

たまたま、アメリカが中国における知財権保護の不備を理由としてWTOに国際仲裁の申立てをした時期に、今回の裁判が下された。その意味では実に微妙な点をもつ判決である。要は、いままでは知財権侵害を理由として中国企業、とくに中小規模の民営企業が大手の外国企業に一方的に訴えられてきたが、今回の事件はこれと反して、一部の中国民営企業が自ら積極的に攻撃の戦略を採用しようとしていることの具体的な一例であろう。

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